「借地借家法」の3つ目のテーマである「借家権」について解説します。多くの人に馴染みがあるテーマですが、特に「定期借家権」について詳しく説明し、表を用いてわかりやすくまとめます。
借家契約
借家契約には「普通借家」と「定期借家」の2種類があります。
普通借家
- 目的:
一般的な居住用の借家契約 - 特徴:
期間を定めないか、期間を定めても1年以上の契約。
期間終了後も自動的に更新され、借り手が希望すれば永続的に住み続けられる。
貸し手が契約を終了させるには、非常に重い正当な理由が必要。 - 契約期間と更新:
契約期間は自由に設定可能。
1年未満の契約は「期間の定めがない契約」と見なされます。
自動更新されるため、特別な手続きなしで住み続けることができます。 - 解約:
借り手側からの解約は自由に行えますが、一般的には1ヶ月前に通知する必要があります。
貸し手側からの解約は、正当な理由がない限りできません。 - 更新料:
更新時には更新料が発生することがあり、契約時に定められます。
定期借家
- 目的:
特定の期間のみ家を貸す契約 - 特徴:
契約期間は自由に設定可能で、1年未満の契約も可能。
期間終了後の更新はできず、再契約が必要。
契約終了時には、必ず家を返却する必要があります。 - 契約期間と更新:
契約期間は自由に設定可能。
期間終了時には更新できず、再契約が必要です。 - 解約:
中途解約は原則として不可ですが、借り手にやむを得ない理由がある場合は例外的に認められます。 - 契約方法:
契約は書面で行う必要があります。
期間終了時には借り手に通知する義務があります。
普通借家と定期借家の比較
造作買取請求権
造作買取請求権とは、借り手が家に取り付けたエアコンなどの設備を、貸し手が買取ることを請求できる権利です。これは貸し手の同意を得て取り付けたものであり、契約終了時にその設備を残す場合に適用されます。特約でこの権利を放棄することも可能です。
現状回復義務
現状回復義務とは、借り手が家を借りた時の状態に戻して返す義務です。ただし、通常の使用で発生する損耗や経年変化については、この義務を負いません。
過去問
借地借家法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、同法第38条による定期建物賃貸借契約を定期借家契約といい、それ以外の建物賃貸借契約を普通借家契約という。また、記載のない事項については考慮しないものとする。
1.普通借家契約において存続期間を6ヵ月と定めた場合、その存続期間は1年とみなされる。
2.普通借家契約において、賃借人は、その建物の賃借権の登記がなくても、引渡しを受けていれば、その後その建物について物権を取得した者に賃借権を対抗することができる。
3.定期借家契約は、契約当事者の合意があっても、存続期間を6ヵ月未満とすることはできない。
4.定期借家契約は、公正証書によって締結しなければならない。
日本 FP 協会 2級ファイナンシャル・プランニング技能検定学科試験 21年1月
最も「○適切」な選択肢を選ぶ問題
- 普通借家契約は1年以上で、1年未満での存続期間は、期間の定めがないものと扱われます。したがって「×不適切」です。
- この章で説明したとおり、鍵などの引き渡しを受けていれば、対抗権を有します。したがって、「○適切」です。
- 定期借家契約は1年未満でも契約当事者の合意があれば、設定できますので、「×不適切」です。
- 定期借家契約は、書面で契約する必要がありますが、公正証書までは必要ありませんので「×不適切」です。
今回は、ここまでです。
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