金融資産運用分野を理解するには、経済指標を理解することが非常に重要です。「景気動向指数」「マネーストック」「マネタリーベース」「消費者物価指数」など、資産運用で押さえておきたい経済指標を簡潔に解説し、理解を深めていきます。
経済指標と景気指標の基本
金融資産運用の分野では、経済指標や景気指標を理解することが非常に重要です。代表的な経済指標には、GDP(国内総生産)があります。GDPは、国内で一定期間に生産された財やサービスの総価値を示し、国の経済規模を表します。経済成長率はGDPの増減率で表され、プラス成長は景気拡大、マイナス成長は景気後退を示します。
景気動向指数とは?
また、景気動向指数(DIとCI)も重要な指標です。CI(Composite Index、総合指数)は、景気全体の動向を先行・一致・遅行の3つの区分で示します。一方、DI(Diffusion Index、拡散指数)は、景気の変動を「改善」と「悪化」の項目ごとに割合で示す指標です。DIは50%を境に、50%以上なら景気改善、50%未満なら悪化を意味します。CIとDIの両方を活用することで、景気の変化をより正確に把握でき、適切な資産運用の判断が可能となります。
景気動向指数は、経済の状態を数値で示し、景気が良いか悪いかを判断するための指標です。景気の予測を立てるためにさまざまなデータを集めて作成されます。これには、以下の3つの分類があります:
- 先行指数: 景気に先行して動く指標で、これが上昇すると、今後の景気が良くなると予想されます。
- 一致指数: 景気の動きと一致する指標で、景気が実際に良い時にこの指標が上がります。
- 遅行指数: 景気に遅れて動く指標で、景気が悪化した後に指標が変化します。
これらの指標は、内閣府が毎月発表しており、景気の状態を把握するための重要なデータです。
2. 具体的な指標とそのタイミング
景気動向指数には、さまざまな経済データが含まれています。代表的なものとしては以下があります:
- 有効求人倍率(一致指数): 企業がどれだけ求人を出しているかを示す指標。求人が多ければ景気が良いことを示します。
- 新規求人数(先行指数): 企業が新たに求人を出すタイミングを示し、景気の先行きを予測する指標です。
- 完全失業率(遅行指数): 失業者数を示す指標で、景気の後退を表します。
このように、各指標のタイミングを理解することで、景気動向を予測しやすくなります。
先行指数 | 新規求人数(除学卒)、東証株価指数、新設住宅着工床面積など |
一致指数 | 生産指数(鉱工業)、有効求人倍率、営業利益(全産業) |
遅行指数 | 完全失業率、消費者物価指数、法人税収入など |
3. マネーストックとマネタリーベース
マネーストックは、国や金融機関以外の経済主体(企業や個人)が保有する通貨の総量を指します。マネーストックが増加することで、市場に出回るお金の量が増え、景気が良くなる可能性があります。このデータは、日本銀行が毎月発表しています。
一方で、マネタリーベースは、日本銀行が供給する通貨量のことです。日本銀行が市場にお金を流すことで、景気を調整しようとする動きを「金融緩和」と呼びます。金融緩和では、マネタリーベースを増やすことで経済を活性化させ、物価を上昇させることを目指します。
4. 消費者物価指数と企業物価指数
物価指数には主に2つの指標が存在します:
- 消費者物価指数: 総務省が毎月発表しているもので、消費者が日常的に購入する商品の価格変動を示します。インフレ(物価上昇)の判断基準となり、物価が上がることで経済がどのように動いているかを測定します。
- 企業物価指数: 日本銀行が毎月発表しているもので、企業間で取引される商品の価格変動を示す指標です。企業のコストが上がることで、消費者に影響が及ぶ可能性があり、この指標は変動が激しい特徴があります。
消費者物価指数は、一般消費者に直接関わるため注目されていますが、企業物価指数は原材料費の上昇など、企業活動に直接影響を与えます。
過去問
景気動向指数および全国企業短期経済観測調査(日銀短観)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1.景気動向指数は、生産、雇用などさまざまな経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって作成された指標であり、ディフュージョン・インデックス(DI)を中心として公表される。
2.景気動向指数に採用されている系列は、おおむね景気の1つの山もしくは谷が経過するごとに見直しが行われている。
3.日銀短観は、日本銀行が全国約1万社の企業を対象に、四半期ごとに実施する統計調査であり、全国の企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運営に資することを目的としている。
4.日銀短観で公表される「業況判断DI」は、回答時点の業況とその3ヵ月後の業況予測について、「良い」と回答した企業の社数構成比から「悪い」と回答した企業の社数構成比を差し引いて算出される。
日本 FP 協会 2級ファイナンシャル・プランニング技能検定学科試験 23年9月
最も「×不適切」な選択肢を選ぶ問題
- 景気動向指数とは、景気の現状把握と将来予測のため、内閣府が発表している指標で、生産や雇用などの経済活動における重要で景気に敏感に反応する「先行」・「一致」・「遅行」の3つの指数の動きを統合したものです。従って、「×不適切」です。
- 景気動向指数を構成する経済指標は、経済動向や景気変動のパターンに対応するために、景気の山・谷がを経過する毎に点検し、必要に応じて見直しが行われています。「○適切」です。
- 日銀短観(全国企業短期経済観測調査)は、日銀が年4回、約1万社を対象に実施しています。「○適切」です。
- 業況判断DIとは、簡単に言うと、景気について「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。「○適切」です。
今回はここまでです。
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