【3分で解説!FP2級】リスク管理〜法人の生命保険料の経費処理について、簿記知らなくてもOK

ファイナンシャルプランナー2級

法人が契約する生命保険の経理処理について、税金の観点から解説します。
以下の基本原則を理解することで、法人保険の経理処理の理解がスムーズになります。簿記の細かい知識がなくても、これらのポイントを押さえておけば、法人保険の税金処理を理解しやすくなります。ぜひ、参考にしてみてください。

法人保険の基本原則

まず、生命保険料の扱いについてです。保険の種類によって経理処理が異なります。大きく分けると、「貯蓄性がある保険」と「掛け捨て保険」があります。

保険の種類説明経理処理
貯蓄性がある保険養老保険や終身保険など、将来法人にお金が返ってくる可能性がある資産として計上
掛け捨て保険定期保険など、将来お金が返ってくる可能性が低い損金(経費)として計上

養老保険の経理処理

契約者が法人で、被保険者を役員や従業員とする養老保険のうち、一定の要件を満たすものは、支払った保険金の2分の1を福利厚生費として損金算入することができます。これを「ハーフタックスプラン」と呼びます。

ケース 経理処理
法人が契約し、法人が保険金を受け取る場合 全額資産計上
法人が契約し、遺族に死亡保険金が支払われる場合 支払った保険料の1/2を損金参入(福利厚生費)
支払った保険料の1/2を資産計上(生命保険積立金)

個人年金保険の経理処理

個人年金保険もケースによって異なります。

ケース 死亡給付金
受取人
年金
受取人
経理処理
法人が契約 法人 法人 全額資産計上
法人が契約 役員・従業員の遺族 役員・従業員 給与
法人が契約 役員・従業員の遺族 法人

1/10 福利厚生費
9/10 資産計上

定期保険及び第3分野保険の取り扱い

解約返戻金が高い保険は損金参入できないルール変更がありました。節税目的での保険利用を防ぐためです。原則は貯蓄性の有無で変わります。つまり。解約返戻金率が50%以下と50%を超えるパターンで、大きく変わります。

解約返戻金率経理処理
50%以下全額損金参入
50%を超える一部分を資産計上

50%を超える場合は、さらに以下の条件となります。実際はもう少し細かいですが、試験に出る箇所だけピックアップしています。

最高解約返戻率資産計上期間同期間に支払った保険料の
「資産計上額」
の割合
同期間に支払った保険料の
「損金算入額」
の割合
50%以下なしなし100%
50%超70%以下保険期間の40%相当の取扱期間まで40%60%
70%超85%以下保険期間の40%相当の取扱期間まで60%40%
85%超期間見合い10年目前後で割合変化資産計上分の残り

細かい数字は覚える必要はないとのことですが、実際に過去問で上記赤字の箇所は問われることがありました。ですので、数字だけでも頭の片隅に置いておきたいです。

保険金を受け取る時の処理

保険金を受け取る時の処理についてです。解約返戻金や保険金は全て益金として計上され、法人税が課税されます。

ケース経理処理
解約返戻金がある場合資産計上していた額との差額を益金として算入
保険金が支払われた場合全額益金として算入

過去問

契約者(= 保険料負担者)を法人、被保険者を役員とする生命保険に係る保険料等の経理処理に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、いずれの保険契約も2020年10月に締結し、他に加入している保険契約はなく、保険料は年払いであるものとする。

1.法人が受け取った医療保険の入院給付金は、その全額を益金の額に算入する。

2.死亡保険金受取人が法人である終身保険の支払保険料は、その全額を資産に計上する。

3.給付金受取人が法人で、解約返戻金相当額のない短期払いの医療保険の支払保険料は、その事業年度に支払った保険料の額が被保険者1人当たり30万円以下の場合、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。

4.死亡保険金受取人が法人で、最高解約返戻率が65%である定期保険(保険期間20年)の支払保険料は、保険期間の前半4割相当期間においては、その60%相当額を資産に計上し、残額を損金の額に算入することができる。

日本 FP 協会 2級ファイナンシャル・プランニング技能検定学科試験 21年1月

最も「×不適切」な選択肢を選ぶ問題

  1. 法人が受け取る保険金・給付金は、全額益金として算入されるため、「○適切」です。
  2. 貯蓄性がある終身保険の支払保険料は、資産計上するので、「○適切」です。
  3. 「「定期保険及び第3分野保険の取り扱い」の解約返戻金率が50%以下のケースに該当します。全額を損金の額に算入できますので、「○適切」です。
  4. 「定期保険及び第3分野保険の取り扱い」の解約返戻金率が50%超のルールに対する問いです。50-70%のレンジで、資産計上:40%、損金算入:60%の項目となります。設問では、資産計上:60%と書かれているので、「×不適切」となります。

法人を契約者(=保険料負担者)とする生命 保険に係る保険料の経理処理に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、いずれも保険料は年払いで、いずれの保険契約も2020年4月に締結したものとする。

1.被保険者が役員・従業員全員、死亡保険金受取人が被保険者の遺族、満期保険金受取人が法人である養老保険の支払保険料は、その2分の1相当額を資産に計上し、残額を損金の額に算入することができる。

2.被保険者が役員、死亡保険金受取人が法人である終身保険の支払保険料は、その全額を資産に計上する。

3.被保険者が役員、死亡保険金受取人が法人で、最高解約返戻率が80%である定期保険(保険期間10年)の支払保険料は、保険期間の前半4割相当期間においては、その40%相当額を資産に計上し、残額を損金の額に算入することができる。

4.被保険者が役員、給付金受取人が法人である解約返戻金のない医療保険の支払保険料は、損金の額に算入することができる。

日本 FP 協会 2級ファイナンシャル・プランニング技能検定学科試験 20年9月

最も「×不適切」な選択肢を選ぶ問題

  1. ハーフタックスプランを指しています。支払った保険料は、1/2ずつ資産と損金に算入できますので、「○適切」です。
  2. 貯蓄性のある終身保険の保険料は、法人の資産として計上しますので、「○適切」です。
  3. 「定期保険及び第3分野保険の取り扱い」の解約返戻金率が50%超のルールに対する問いです。70-85%のレンジで、資産計上:60%、損金算入:40%の項目となります。問題では資産計上:40%とあるので、「×不適切」です。
  4. 解約返戻金が50%の定期保険の支払保険料は全額、損金参入可能ですので、「○適切」です。

今回は、ここまでです。

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