相続や事業承継は、ファイナンシャルプランナー試験(2級)で頻出の分野です。本記事では、試験対策として重要なポイントを簡潔に整理し、表形式でまとめる部分を交えて解説します。
相続・事業承継分野は、この章が最後なので、意外とさらっと探してしまいますが、試験には結構出る内容になっていますので、しっかりと押さえて、1点を確実に取りたいところです
事業承継対策の基礎
事業承継対策では、経営を支える資源(ヒト・モノ・カネ)を円滑に引き継げるように現在の経営者が責任を持って体制を構築しておくことが重要です。
特に中小企業のオーナーが死亡した際、株価が高騰して相続税が膨大になるリスクがあります。そのため、以下のような対策が重要です。
株価引き下げの方法
対策 | 効果 |
---|---|
役員退職金の支払い | 会社の純資産を減少させ、株価評価額を下げる。 |
配当の引き下げ | 配当基準による株価評価を低下させる。 |
利益を減少させる | 利益基準の株価評価を低下させる。 |
経営の安定化
経営を安定させるためには、以下のような工夫が求められます。
- 株式の分散を防ぐ:主要後継者に多くの株を集中させる。
- 同族株主によるコントロール:外部株主を排除し、経営権を確保する。
非上場株式の納税猶予・免除制度
中小企業の事業承継を支援するために、非上場株式に対する納税猶予・免除制度があります。以下の2つが主要な措置です。
この制度を利用するには、都道府県知事の認定が必要となります。
中小企業が、事業承継に関わる税金のために、廃業してしまうと、国としても損失なので、このような制度があります。
特例措置 | 一般措置 | |
---|---|---|
事前の計画策定等 | 特例承継計画の提出 【平成30年4月1日から令和8年3月31日まで】 | 不要 |
適用期限 | 次の期間の相続等・贈与 【平成30年1月1日から令和9年12月31日まで】 | なし |
対象株数 | 全株式 | 総株式数の最大3分の2まで |
納税猶予割合 | 100% | 相続等: 80%、贈与:100% |
承継パターン | 複数の株主から最大3人の後継者 | 複数の株主から1人の後継者 |
雇用確保要件 | 弾力化 | 承継後5年間 平均8割の雇用維持が必要 |
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 | あり | なし |
相続時精算課税の適用 | 60歳以上の贈与者から18歳以上の者への贈与 | 60歳以上の贈与者から18歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与 |
特例措置では、猶予だけでなく免除の範囲も広がるため、活用のメリットが大きいです。
個人版事業承継税制
個人事業者向けにも事業承継を支援する制度があります。土地や建物、設備などを次世代に承継する際、贈与税・相続税が猶予または免除される制度です。法人版と同様、計画的な申請が必要です。
過去問
非上場企業の事業承継対策等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1.経営者への役員退職金の原資の準備として、契約者(=保険料負担者)および死亡保険金受取人を法人、被保険者を経営者とする終身保険などの生命保険に加入することが考えられる。
2.経営者が保有している自社株式を役員である後継者に取得させる場合、後継者にとってその取得資金の負担が大きいときには、あらかじめ後継者の役員報酬を増加させるなどの対策を講じることが考えられる。
3.「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の適用を受ける場合、相続時精算課税制度の適用を受けることはできない。
4.「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の適用を受けた場合、後継者が先代経営者から贈与を受けたすべての非上場株式が、その特例の対象となる。
最も×不適切な項目を選ぶ問題
- 役員の死亡・引退時の退職金準備として、死亡保険金受取人を法人とする終身保険に加入すると、保険金は必ず法人が受け取れるため、支払保険料は全額資産計上されます。節税メリットはありませんが、退職金を確実に準備できます。○適切
- 役員給与を増額すれば、後継者の現金が増え、贈与税・相続税の支払い能力が向上し、代償分割や自社株買い取りの資金負担を軽減できます。○適切
- 「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の適用を受ける場合、相続時精算課税制度の適用を受けることはできますので、×不適切
- 特例措置の場合は、すべての非上場株式が対象となりますので、○適切です。
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