株式の評価方法は、相続税や贈与税の計算において重要な知識です。特に、非上場株式の評価は複雑で、2級FP試験でも頻出のトピックとなっています。本記事では、上場株式と非上場株式の評価方法を分かりやすく整理し、試験に役立つ要点を解説します。
上場株式の評価方法
上場株式は、以下の4つの価格のうち最も低い価格を使用して評価します。
項目 | 説明 |
---|---|
相続開始日の終値 | 被相続人が亡くなった当日の株価(終値)を使用します。 |
相続開始月の月平均株価 | 相続開始月の株価の平均値を計算します。 |
相続開始月の前月の月平均株価 | 相続開始月の1か月前の株価の平均値です。 |
相続開始月の前々月の月平均株価 | 相続開始月の2か月前の株価の平均値です。 |
この中で最も低い価格を選択することがポイントです。試験問題では、余分なデータ(例: 3か月以上前の価格)も提示されることがあるため、正確に選ぶ注意力が必要です。
非上場株式の評価方法
非上場株式の評価では、株主の属性(同族株主かどうか)と会社の規模により、評価方法が異なります。
株主の属性による分類
株主の種類 | 説明 |
---|---|
同族株主 | 被相続人が会社を経営しており、株主がその家族の場合。会社規模により 類似業種比準方式か、純資産価額方式 |
同族族等以外(赤の他人) | 株主がオーナーの家族ではない場合。この場合は配当還元方式が使用されます。 |
会社規模による分類
同族株主等が相続した場合、会社の規模によって以下の評価方法を選択します。
会社の規模 | 評価方法 | 特徴 |
---|---|---|
大規模企業 | 類似業種比準方式 | 同業種で上場している企業の株価を基準に、配当金・利益額・純資産額を比較して評価します。 |
中規模企業 | 併用方式 | 類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせて評価します。 |
小規模企業 | 純資産価額方式 | 純資産の価値を基に、会社を解散した場合の株式価値を計算します。 |
配当還元方式について
同族株式等以外が相続する場合、配当還元方式が用いられます。この方式では、株主にとっての主な利益である「配当」に基づいて株式の価値を評価します。具体的には、過去の配当金額を元に株価を計算します。
具体的には過去2年間の配当平均額を一定の利率(10%)で還元して評価します。
その他財産の評価ポイント
試験では株式以外の財産評価も出題されることがあります。以下のポイントを押さえておきましょう。
財産種別 | 評価基準 | 補足 |
---|---|---|
預貯金 | 残高 + 利息 | 外貨預金の場合、TTBレートを使用。 |
生命保険契約 | 解約返戻金の相当額 | 保険金額ではなく現金化価値を評価。 |
ゴルフ会員権 | 取引価格の70% | 7割の価値で評価する。 |
公社債(上場利付公社債) | (課税時期の最終価格+経過利息)×券面額/100 | 経過利息は源泉所得税相当額控除後 |
公社債(個人向け国債) | 額面金額+既経過利子ー中途換金調整額 |
まとめ
株式評価は、相続税の算出において重要な知識です。特に非上場株式では、株主属性や会社規模に応じた評価方法の選択が求められます。本記事で紹介した要点を押さえ、実際の試験対策に役立ててください。
過去問
相続税における取引相場のない株式の評価に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1.会社規模が小会社である会社の株式の価額は、純資産価額方式によって評価し、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式によって評価することはできない。
2.会社規模が中会社である会社の株式の価額は、類似業種比準方式、または純資産価額方式のいずれかによって評価する。
3.同族株主が取得した土地保有特定会社に該当する会社の株式は、原則として、類似業種比準方式によって評価する。
4.同族株主のいる会社において、同族株主以外の株主が取得した株式は、その会社規模にかかわらず、原則として、配当還元方式によって評価する。
日本 FP 協会 2級ファイナンシャル・プランニング技能検定学科試験 22年9月
最も「○適切」な選択肢を選ぶ問題。4が正解
- 小規模の会社の場合、併用方式を使ってもいいことになっています。必ずしも、1対1で決まる者ではないようです。×不適切
- 中規模の会社の場合、併用方式を使うことになっていますが、純資産価額方式を使ってもよいです。中規模と小規模の線引きは微妙ですね。×不適切
- 土地保有特定会社や株式保有特定会社は、「特定の評価会社」とされ、株式は、原則として純資産価額方式で評価されます。×不適切
- 同族株式等以外が取得した株式は、配当還元方式で評価されます。○適切
各種金融資産の相続税評価に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1.外貨定期預金の価額の円貨換算については、原則として、取引金融機関が公表する課税時期における対顧客直物電信買相場(TTB)またはこれに準ずる相場による。
2.既経過利子の額が少額である普通預金の価額は、課税時期現在の預入高により評価する。
3.個人向け国債の価額は、額面金額により評価する。
4.相続開始時において、保険事故がまだ発生していない生命保険契約に関する権利の価額は、原則として、相続開始時においてその契約を解約するとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額により評価する。
日本 FP 協会 2級ファイナンシャル・プランニング技能検定学科試験 21年9月
最も「×不適切」な選択肢を選ぶ問題。3が正解
- 相続税評価の際、外貨建て資産は円換算して評価することが必要ですが、原則としてその資産を取引している金融機関の課税時期におけるTTBレートで評価します。○適切
- 普通預金や当座預金等、既経過利子が少額である場合には、利子は評価せず、相続開始時点の残高が相続税評価額となります。○適切
- 個人向け国債は、額面金額+既経過利子ー中途換金調整額なので、額面より少なくなります。×不適切
- 生命保険は、解約返戻金相当なので、○適切
条件がいろいろ複雑なので、過去問で慣れましょう
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