FP2級試験では、労災保険と健康保険の違いがよく出題されます。特に、対象者や保険料の負担、給付の種類など、混同しやすい点が多く、正確な理解が求められます。
今回は、労災保険の基本を整理し、試験で狙われやすいポイントを中心にまとめました。
労災保険の基本
労災保険(労働者災害補償保険)は、業務上または通勤中の災害による負傷、疾病、障害、死亡などに対して給付を行う制度です。
労災保険のポイント
- パートやアルバイトなど、すべての労働者が対象となる保険です(役員は対象となりません)。
- ただし、中小事業主や一人親方(建設業で雇う側も雇われる側もしていない人)などは、特別加入制度により労災保険に加入可能です。
- 労働者が1名以上いる会社は強制加入で、保険料は全額事業主負担です。
- 保険料率は事業の種類によって異なり、危険な仕事の場合は高くなります。
- 給付内容は、療養補償給付/休業補償給付/障害補償年金/障害補償給付/介護保障給付/遺族補償給付/二次健康診断等給付の7つです。
健康保険との比較
労災保険 | 健康保険 | |
対象者 | 原則すべての労働者(雇用形態不問) | 一定の条件(週20時間以上勤務など) |
保険料の負担 | 全額事業主負担 | 労使折半 |
給付の対象 | 業務・通勤災害 | 業務災害以外の病気・けがなど |
療養費 | 全額支給 | 3割自己負担 |
休業時の待機時間 | 通算して3日の休業 | 連続した3日の休業 |
休業補償の日額 | 80% 休業補償給付:60% 休業特別支給金:20% | 2/3 |
特に、休業時の待機時間が、通算して3日と連続した3日で差分がある点が要注意です。
試験でのポイント
労災保険の内容を押さえるときは、健康保険との違いを意識することが最大のポイントです。
また、以下のようなひっかけ問題にも注意してください。
- 保険料は労使折半である → ×(労災保険は事業主が全額負担)
- パートやアルバイトは対象外 → ×(すべての労働者が対象)
過去問
労働者災害補償保険(以下「労災保険」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
日本 FP 協会 2級ファイナンシャル・プランニング技能検定学科試験 21年9月
- 労災保険の適用を受ける労働者には、雇用形態がアルバイトやパートタイマーである者は含まれない。
- 業務上の負傷または疾病が治癒したときに身体に一定の障害が残り、その障害の程度が労働者災害補償保険法に規定する障害等級に該当する場合、障害補償給付が受けられる。
- 労災保険の適用事業所の事業主は、その営む事業において使用する労働者数の多寡にかかわらず、労災保険の特別加入の対象となる。
- 労災保険の保険料を計算する際に用いる保険料率は、適用事業所の事業の種類による差異はない。
この問題は、最も適切である(〇)を見つける問題です。
- 労災保険は、正社員でもパートでもアルバイトでも、すべての労働者が対象となります。大学生がコンビニでアルバイトしていても、その大学生が仕事でケガをした場合は労災(業務災害)の適用となる可能性があります。したがって、「アルバイトやパートタイマーである者は含まれない」は誤りのため、「×不適切」です。
- 障害補償給付とは、「傷病が治ったものの、身体に障害が残った時に年金や一時金が支給される」というものなので、「〇適切」です。
- 事業主が「特別加入」できるのは、中小事業主や一人親方など、条件があるため、「×不適切」です。問題文に「事業主は」とある点を見逃して、「おや?」となることがあるかもしれません。
- 労災保険は、危険な事業の場合など、保険料率が高くなるため、「事業の種類による差異はない」は誤りで「×不適切」です。